将来性分析:企業価値の実際
1 詳細な業績の予想
健全な予想にとって重要なのは、基本的な仮定が会社のビジネスの現実に基づいているということである。
戦略分析は、会社の価値を見通し、現在の企業業績が将来も持続可能かを理解するために大変重要である。
会計分析と比率分析は、会社の現在の業績がどうなのか、比率が業績の信頼できる指標なのか、について深い理解を提供する。
評価のための予想に共通する作業は、期間ごとに下記の6つの重要な業績ドライバーについて、共通の仮定を設けることから始める
① 前年比の売上高成長率
② NOPAT対売上高比率
③ 税引後正味利息費用と正味負債の比率
④ 正味営業運転資本と売上高の比率
⑤ 正味営業固定資産と売上高の比率
⑥ 正味負債と正味資本の比率
これらの6つの仮定は、一体として、企業の損益計算書、バランスシート、キャッシュフローとROEを予測するのに十分である。超過NOPATと超過利益を予測するためには企業の資本コストも推定する必要がある。
Sigma Incの例
Sigma社は1998年末の売上高が1000百万ドル、正味負債が715百万ドル(正味営業運転資本が275百万ドル、正味営業固定資産が440万ドル)
財務諸表の予想(12-2)
仮定
① 前年比の売上高成長率
1999年から2003年までは毎年10%成長。2004年は3.5%成長。
② NOPAT対売上高比率
1990年に14%。以後毎年1%ずつ下落し、2003年に10%。
③ 税引後正味利息費用と正味負債の比率
5%。
④ 正味営業運転資本と売上高の比率
25%。
⑤ 正味営業固定資産と売上高の比率
40%。
⑥ 正味負債と正味資本の比率
正味負債は正味資本の40%。
予想財務諸表が意味している業績の見通し(12-3)
① 超過営業ROA
② 超過ROE
③ 超過NOPAT
④ 超過利益
⑤ 負債および株主資本保有者に帰属するフリー・キャッシュフロー
⑥ 株主資本保有者に帰属するフリー・キャッシュフロー
業績予測の現在価値(12-4)
2 ターミナル・バリュー
ターミナル・バリューの本質は最終年度以降に発生する超過利益またはフリー・キャッシュフローの現在価値である。
競争均衡の仮定の下でのターミナル・バリュー
長期的な売上高の成長率をどう見込むかはという正確に測れそうにない問題は、常ではないにしても、対してはさほど重要なことではない。
競争にさらされている企業は最終的に「正味現在価値がゼロの」プロジェクトになる。
最終年度以降の財務予測(12-5)
長期的には競争の圧力がコストに見合う利益しかもたらさない。
最終年度以降は超過利益が発生しない場合のSigma社のターミナル・バリュー(12-6)
ターミナル・バリューの推定にとって「競争均衡の仮定」は不可欠なものではない。もし超過的な売上高利益率を新しい市場で何年間にもわたって獲得できるとアナリストが予想するのであれば、それを企業評価分析に取り入れることは可能である。
競争均衡の仮定が売上高の増分にのみ適用される場合のターミナル・バリュー
(12-7)
業績と成長が持続的に超過的である場合のターミナル・バリュー
状況によっては、企業が何年にもわたり新しいプロジェクトから超過利潤を稼ぐという仮定をアナリストが望むこともある。このような場合、競争均衡を仮定することが適当となるまで、利益とキャッシュフローの見積り期間を延長することもありうる。
もう一つの可能性は、超過利益ないし超過キャッシュフローがある一定率で成長すると見積もることである。
株価倍率に基づくターミナル・バリュー
ターミナル・バリューを計算するのによく使われるやり方は、最終年度の超過利益、キャッシュフローもしくは簿価に株価倍率を適用することである。
市場が大きな超過利潤を伴う成長を期待している場合には、現時点の株価収益率や株価・キャッシュフロー倍率は高くなるだろう。しかし一度その成長が実現してしまえば、株価収益率は正常な水準に落ち着くこととなる。
ここで利用できる株価収益率はWACCの逆数に近い、7から11の範囲でなくてはならないということである。
最終年度の選択
詳細な予測期間をどのくらい長くとればよいのか?競争均衡の仮定をもちいるのなら、その答えは追加の投資プロジェクトから企業が得られる収益がその均衡に達するまでに必要な時間ということとなる。
米国ではたいていの企業について5年から10年以内にROEが正常な水準に戻ると予測されることを過去の事例は示している。しかし、普通の企業を考えるなら、予測期間をもっと短くしても構わない。というのも投資全体かであれば収益率が正常値を超えていたとしても、追加的な投資からの収益は、正常な水準ということがありうるからである。そのため5年から10年もの予測期間は大部分の企業にとって充分過ぎるほどに違いない。
3 割引率の計算
WACCの公式
負債と株主資本のコストに対するウェイト付け
負債の中には何を含めたらよいのであろうか?その答えはフリー・キャッシュフローをどう計算したかを考えれば明らかである。そこでのフリー・キャッシュフローはWACCが適用される資本を提供した者への見返りである。
ここでややこしいのは株主資本の市場価値をどう決めるかである。というのも、それこそこれから決めようとしている数値そのものであるからである。
この問題に対する一般的な解決策は、「目標」となる負債・資本比率をここで外挿するというやり方である。
もう一つの解決策は、WACCを求めるための株主資本価値と最終的な推定値となる株主資本とが一致するまで計算する。
負債コストの推定
現在の市場利率に基づいて計算される。市場の金利に1マイナス限界法人利率を掛ければ、税引後ベースに変換できる。
株主資本コストの推定
CAPM、CAPMと規模効果の組み合わせなどいろいろ
4 見積り価値の計算
超過リターン方式
超過利益方式
フリー・キャッシュフロー方式
いずれも同じ値となるが、フリー・キャッシュフロー法の下ではターミナル・バリューが、他の方式と比べてかなり大きな割合を示している。これは超過リターン法と超過利益法は企業の資産と株主資本の簿価に依存しており、ターミナル・バリューの推定値は簿価に対する増分の推定値であるという事実による。
推定値の主な計算はすべてのキャッシュフローが年度末に発生したかのように扱っている。修正が必要。
会計の歪みの取り扱い
アナリストが歪みを認識している限りにおいて、会計の選択自体によって、推定企業価値は影響されない。
偏った会計に遭遇したアナリストは、現在の利益と簿価を調整して経営者の会計バイアスを除去するか、これらのバイアスを認識した上でそれに従って将来の予測を調整するかしなければならない。
マイナスの簿価の取り扱い
マイナスの株主資本をもつ企業の一つ目の類型は、立ち上げ期間にあるかハイテク企業に属する企業。二つ目の類型は、業績が不振で株主による初期投資を上回る累積損失が生じる企業である。
このような場合、
① 株主資本よりむしろ資産の価値を評価する。そして企業の負債価値の推定値に基づいて、株主資本価値を推定する
② 償却された支出を資産化する。
③ 観察された株価から逆戻りすることである。
重要なのは負の株主資本価値をもつ企業がしばしば大きなオプション価値を含む点に注意することである。リアル・オプションの価値を推定する必要がある。
余剰現金と余剰キャッシュフローの取り扱い
我々は企業の営業をまかなうのに必要なレベルを超えた現金が、株主に支払われると暗黙裡のうちに仮定した。もし、企業が予測期間の初めに大きな余剰現金を持っている場合、我々の方式は現金有り高の余剰を一回限りの株主への現金支払いとして取り扱う必要がある。この支払いは、残りの計算から算出された企業価値の推定値に単に加算すればよい。
MMの定理によると、配当政策は企業価値に無関係であるが、経営者が価値破壊的な買収を実行する場合は、エージェンシーコストを調整しなければならない。
...hide more